ウィスカとは
ウィスカについて
ウィスカとは結晶表面からその外側に向けて自然成長する細くて小さな金属単結晶のことです。スズめっき後によく見られますが、亜鉛・代替はんだ(スズ-銀などの合金)など他の金属でも発生することが知られています。
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錫(スズ)めっき
錫スズめっきとは 錫(英語名:Tin・元素記号:Sn)は、融点232℃ と低い融点ではんだ濡れ性の大変優れた金属です。 錫めっきは貴な金属で耐食性に優れ、柔らかく展延性に富み毒性が低いという特色も持っ ...
ウィスカ(Whisker)は「(犬や猫などの)髭」という意味で、主に髭のような細長い形状に成長します。ウィスカは人間の毛髪よりもはるかに細く、肉眼での観察が困難な場合もあります。
ウィスカの歴史は意外に古く、今から70年以上前に遡ります。1946 年米国のCobb 氏によりカドミウムめっきからウィスカが初めてレビューされました。当時はウィスカによる電子機器の故障が多発していたため、1950 年から1960 年代に掛けてウィスカに関する多くの基礎研究が為されていました。
*ウィスカが発生しやすい条件下でウィスカの成長を促進させました。
・当社で観察したウィスカ
ウィスカ発生のメカニズム
ウィスカの発生原因として主に下記の影響が考えられています。
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- 金属間化合物の拡散
- ガルバニック腐食(電位差のある異種金属の接触箇所に水がかかり、電子のやりとりが行われることで生じる腐食)
- 外部応力
- 熱膨張係数の差による応力の影響
ウィスカ発生のメカニズム(例:スズめっき)
スズの結晶粒界に沿って銅が拡散 |
拡散した銅にスズが押されて応力が発生 |
ウィスカ発生 |
他にもさまざまな要因が考えられていますが、ウィスカの根本的なメカニズムは解明されていません。
ウィスカが発生しやすい環境
ウィスカは室温付近でも早い拡散が見られますが、いくつかの環境影響によって元素拡散が促進されます。ウィスカが発生しやすい環境条件の代表的な例を下記に挙げます。
- 室温における発生
- 温度サイクルで発生
- 酸化・腐食性発生
- 外圧下で発生
- エレクトロマイグレーション現象(金属配線や接合部を流れる電子が金属原子と衝突し、金属原子を輸送する現象)で発生
エレクトロマイグレーション現象で発生するウィスカは、電流密度が高い半導体やフリップチップなど特殊な実装で現れます。
たとえば、アルミ配線では電子が流れる方向にアルミ原子が移動することで陽極側にウィスカやヒロックが発生・成長します。
ウィスカの問題点と対策法
ウィスカの問題点とは
はんだ付けは電子回路などを接合する時に用いられますが接続部でウィスカが成長するとショートが起こり、以下のような問題点が挙げられます。
- システムダウン
- 機器の故障
- 火災などの事故
スズ(Sn)めっきと亜鉛めっきのはんだ付け性とウィスカ発生の比較表
Sn | Sn-Pb スズ6:鉛4 |
Sn-Pb スズ9:鉛1 |
Sn-Ag | Sn-Bi | Sn-Cu | Zn | |
組成 | Sn(100%) | Sn(62%) Pb(38%) |
Sn(90%) Pb(10%) |
Ag(3.5%) | Bi(5%) | Cu(0.7%) | Zn(100%) |
融点 | 232 | 183 | 213 | 221 | 223 | 227 | 420 |
はんだ 濡れ性 |
◎ | ◎ | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | ※ |
ウィスカ | ▼ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ▽ | ▼ |
※めっき析出条件や使用条件によっては効果あり
参考文献:「技術大全シリーズ めっき大全(日刊工業新聞社)」・「製品設計/開発のための 電気めっきガイド(全国鍍金工業組合連合会)」
ウィスカの抑制は非常に重要な課題で、対策として以下のような方法が挙げられます。
- リフロー処理
- 鉛合金
- ニッケルシールド
しかしこれらは完全に抑制できるわけではなかったり、RoHS指令による規制があったりと問題点があります。
当社のはんだ付け用電気ニッケルめっきのご提案
スズははんだ濡れ性のメリットがありますがウィスカ発生のデメリットがあります。しかし当社ではメリットを残したままウィスカを発生させないめっきが可能です。
当社のソルダブルニッケルめっきはスズめっきと同等のはんだ濡れ性があり、ウィスカの発生が無いオリジナル技術です。特別な添加剤や鉛を使用していないため、RoHS指令に対応しております。また貴金属よりも安価です。
ソルダブルニッケルめっき(はんだ付け用電気ニッケルめっき)
はんだ付け性(ぬれ性)はウェッティングバランス法(平衡法)を用いて「ゼロクロス」や「最大ぬれ力」を評価するのが一般的な測定方法になっております。
大手試験機関(沖エンジニアリング社)に依頼し、レスカ社のソルダーチェッカー(SAT-5100)を使用し平衡法にて測定をしました。
溶融はんだ槽へ試料を浸漬する様子
当社のはんだ濡れ性測定データ
T0(ゼロクロスタイム)
溶融はんだ液面が凹んだ状態(接触角が鈍角)から平面状態(接触角90度)になるまでの時間を言います。接触角が鈍角の状態を「はじく」と表現し、接触角が鋭角の状態を「ぬれる」と表現します。つまり、溶融はんだに対して、「はじく」〜「ぬれる」までの変化時間がゼロクロスです。
結果評価の詳しい情報はこちらをご覧ください。