めっき

めっき種別の「はんだ付け性テストデータ」

試験の概要

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はんだ付け性テストデータは各種めっき皮膜のはんだ付け性(ぬれ性)を比較し、メリットとデメリットを明確にすることを目的としています。当社の各種めっき皮膜なためめっき種が同じであっても他社めっき皮膜と同等の結果になるかについては保証できません。各種めっき毎に正確な液組成とめっき条件でのめっきであるためおよその傾向は同じになるものと考えておりますが、当社独自開発のソルダブルニッケルめっきについては他社にないめっき皮膜なため比較は難しいとも考えております。

はんだ付けをする部品のめっき仕様決定の参考資料になれば幸いです。

各種めっき別はんだ付け性の測定前、測定後の試料画像

はんだ付け性(ぬれ性)試験の方法

測定条件

はんだ付け性(ぬれ性)は、ウェッティングバランス法(平衡法)を用いて「ゼロクロス」や「最大ぬれ力」を評価するのが一般的な測定方法になっております。

今回の測定では大手試験機関(沖エンジニアリング社)に依頼し、レスカ社のソルダーチェッカー(SAT-5100)を使用し平衡法にて測定をしました。

めっきした試料を電子天秤に吊るした状態で溶融はんだに浸漬していきます。試料と溶融はんだの接触角から平面そして凸状態にはんだがぬれ上がるまでの変化時間や表面張力の状態で評価します。

*詳細についてはレスカ社ウェブサイトのはんだ付け性試験法の基礎をご参照ください。(https://www.rhesca.co.jp/main/technical/pdf/005s05hto04-01.pdf

レスカ社製 SAT-5100

 

溶融はんだ槽へ試料を浸漬する様子

 

ウェッティングバランス法(平衡法)によるはんだぬれ評価(JIS Z 3198-4より引用)

・ゼロクロスタイム
溶融はんだ液面が凹んだ状態(接触角が鈍角)から平面状態(接触角90度)になるまでの時間を言います。接触角が鈍角の状態を「はじく」と表現し、接触 角が鋭角の状態を「ぬれる」と表現します。つまり溶融はんだに対して、「はじく」〜「ぬれる」までの変化時間がゼロクロスです。

・ぬれ上がり時間
部品の微細化に伴いゼロクロスが発生しない部品を評価する場合、「ぬれ上がり時間」で評価するようになっています。最大ぬれ力の2/3に達するまでの時間を測定します。

・最大ぬれ力(Fmax)
その試料の測定で最大にぬれた値(Fmax)を指します。この値が大きいほど接触角が鋭角であっても、ぬれ上がりが良好と評価できます。ただし計算上の周囲長が乗積されており、試料の面積が大きいとこの値も大きくなるため、比較する場合は同一形状で測定することが必要です。今回のはんだ付け性試験の試料は全て同一サイズ、形状での測定のため比較が可能となっております。

・最終ぬれ力(Fend)
試験終了時のぬれを指します。

・ぬれ安定性(Sb)
Fend/Fmaxの比を表します。

測定方法

光沢スズめっきとソルダブルニッケルめっきの比較(ぬれ性の経時変化試験データ)

          めっき皮膜 光沢スズめっき ソルダブルニッケルめっき
1日 1週間 1ヶ月 1日 1ヶ月 半年 1年
ゼロクロスタイム(s) 0.91 0.96 0.94 0.87 0.95 0.98 0.89
ぬれ上がり時間(s) 0.51 0.40 0.20 0.24 0.24 0.31 0.22
最大ぬれ力(mN) 2.00 2.15 1.93 1.87 1.71 1.76 1.88
最終ぬれ力(mN) 1.95 2.08 1.83 1.86 1.71 1.74 1.88
安定性Sb 0.98 0.97 0.95 0.99 1.00 0.99 1.00

【考察】

スズめっきと当社シルベックが独自開発した電気ニッケルめっきであるソルダブルニッケルめっきのゼロクロスタイムはほぼ同等であり、ぬれ上がりも良い結果です。

*経時変化によるはんだ付け性能の低下についても試験を行いました。スズめっきはめっき皮膜そのものが柔らかく、融点も低いため酸化してもはんだ付け時には問題なく良い性能が出ます。

光沢スズめっきソルダブルニッケルめっきの試験用試料は、当社量産ラインの通常工程でめっきした資料での測定であります。ソルダブルニッケルめっきの経時変化のテスト用試料は通常のビニール保管をした試料を試験しましたが、大変安定した結果となっております。

*結果:ソルダブルニッケルめっきは、スズ同等のはんだ付け性を持っためっきであると判断できます。

各種ニッケルめっきのはんだぬれ性試験データ

           めっき皮膜 無電解ニッケルめっき 普通ニッケルめっき ソルダブルニッケルめっき
Ni-B 低リン 中リン
ゼロクロスタイム(s) 0.90 0.87 1.97 2.76 0.87
ぬれ上がり時間(s) 0.29 0.21 1.01 1.22 0.24
最大ぬれ力(mN) 1.92 1.87 0.77 0.57 1.87
最終ぬれ力(mN) 1.87 1,86 0.55 0.57 1.86
安定性Sb 0.97 0.99 1.00 1.00 0.99

【考察】

*無電解ニッケルの浴タイプ別のはんだ付け性試験では、はんだぬれ性が良いと言われているニッケルボロン・低リンタイプ無電解ニッケルはスズめっきソルダブルニッケルめっき同等のぬれ性が確認されました。

経時によるはんだぬれ性の変化は確認できていませんがNi-Bと低リンタイプ無電解ニッケルめっきについては、ビーカーで作った試料では良いデータが出ました。

中リンタイプ無電解ニッケルめっきは当社量産ラインではんだ付け性を考慮せず通常の工程で試料を作成し試験を行った結果であり、はんだぬれ性はよくない結果となっております。

高リンタイプ無電解ニッケルめっきは、はんだ濡れ性が良くないので試験対象にしておりません。

*普通ニッケルめっきの試料は、当社社内光沢ニッケルめっきを通常工程で製作しました。結果としてははんだ濡れ性がニッケルめっきの中ではもっとも悪い結果となりました。

*ソルダブルニッケルめっきの試料は、当社量産ラインにてソルダブルニッケルめっき通常工程で製作しました。結果としてはんだ濡れ性の良好な試験結果となりました。

金・銀・銅めっきの処理条件別はんだぬれ性試験データ

 

めっき皮膜

金めっき 銀めっき 銅めっき
フラッシュ フラッシュ+封孔処理 0.5μm 光沢銀 光沢銀+変色防止 無光沢銀 無光沢銀+変色防止 変色防止なし 変色防止あり
ゼロクロスタイム(s) 0.57 0.69 0.56 0.59 0.58 0.56 0.61 0.66 0.69
ぬれ上がり時間(s) 0.33 0.26 0.20 0.21 0.22 0.23 0.23 0.28 0.24
最大ぬれ力(mN) 2.76 2.82 2.26 2.73 2.70 2.69 2.76 2.40 2.40
最終ぬれ力(mN) 2.73 2.74 2.24 2.61 2.60 2.57 2.63 2.34 2.33
安定性Sb 0.99 0.97 0.99 0.96 0.96 0.96 0.95 0.98 0.97

【考察】

*金めっきは大変高価ですが酸やアルカリに侵されず非常に酸化しにくいという大変安定した皮膜であり、はんだ濡れ性についても経時変化しないはんだ付け性では優れた金属です。唯一銅への拡散やニッケルバリアーでの熱拡散などがあるので注意は必要です。
金めっきの試験用試料は当社と技術提携している金めっき企業様にお願いして製作してもらいました。

*銀めっきははんだ付け性・ボンディング性に優れていることは知られていますが、保管環境の管理によりはんだ付け性を落としてしまうことがあります。特に硫化ガスに弱く、硫化銀を作り黒化しやすい銀めっきの試験用試料は当社量産ラインで通常工程で製作しました。

*銅めっきは試験データの通り優れたはんだ付け性を持っており、この試料は当社社内で製作しすぐに酸化しにくいように保管した資料での結果であります。経時変化による性能の低下が著しいことが問題であります。
そのような理由から銅めっき上にスズめっきをすることも多いですが、コストダウン他のメリットも加味し当社独自技術の「ソルダブルニッケルめっき」を選択することができます。

測定結果の読み方

はんだ付けする部品のサイズや使用方法により各メーカー様の評価基準は違いますが、一般的にゼロクロスタイムとぬれ上り時間を重要視することが多いようです。
同様に下記のぬれ曲線による濡れ評価に当てはめて総合評価も同時に行います。
―――
ぬれ曲線によるぬれ性評価

*レスカ社 技術試料「はんだ付け性試験法の基礎」(https://www.rhesca.co.jp/main/technical/pdf/005s05hto04-01.pdf)より抜粋

(例)として上記グラフは当社のソルダブルニッケルめっきと光沢スズめっきの経時変化によるはんだ付け性を測定した時のグラフです。ソルダブルニッケルめっき及び光沢スズめっきともに経時変化によるはんだぬれ性の低下がない「良好なぬれ」であることが読み取れます。開発案件やお困りごとがございましたらお気軽にご相談ください。

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